
制の整備は、システム作りの上で重要な意味を有している。そのため、追跡調査により判明したものを含めて所有者の判かる廃船(廃棄物処理法上一般廃棄物扱いとなる個人所有の廃船)に適用される広島方式を下敷きとして、まずこれらの廃船の処理体制から考えていくこととした。 1)廃棄物処理法では、産業活動の中で発生した廃棄物(産業廃棄物)以外の廃棄物を「一般廃棄物」と定義し、一般廃棄物については、その処理を市町村が行う(実際の処理は市町村長が許可した一般廃棄物処理業者が行う場合もある。)こととしている。しかし、廃船のように技術的に処理が困難な廃棄物は、市町村や一般廃棄物処理業者では技術的にも施設的にも処理できないことが多いため、処理は施設及び技術能力を持つ産業廃棄物処理業者に頼らざるを得ない現実を踏まえて、「広島方式」では能力のある産業廃棄物処理業者に一般廃棄物の処理業許可を特別に与えて処理するという方法を取っている。ただし、広島方式による処理システムをスムースに運用していくためには、?@適切な処理業者が確保できるか否か、?A個人負担というには高額な処理費用をどう引下げるか、などの問題があるため、1のa〜cに掲げた三つの条件を付加した。 2)次に「広島方式」では処理できない所有者不明の廃船の処理については、路上放棄自動車の処理方式に習い、地方自治体が行った処理費用の一定部分を舟艇業界等(小型船造船業界を含む。)が負担協力する制度を確立して、対応する方式を提案した。 少なくとも排出者不明の廃船を当事者間で押し付け合う現状は、早急に改善する必要がある。まず、排出者を見つけ出すための努力を行政において行うことが先決であるが、これについても舟艇業界側でも協力する体制を整備していくと同時に、それができない場合の処置としては、双方の言い分を勘案すると処理費用をいずれか一方が負担するという方法はまず実現不可能と見られるため、市町村、製造者側の双方で分担する形が最も公平な解決方法と考えた。 取りようによっては、両者にとっては厳しいシステムと受け取れるかもしれない。しかし、廃船問題に限らず、所有者にとって最も身近かで信頼できる窓口は、市町村であり、ボートの販売店や製作を頼んだ造船所であることは、所有者アンケート等から読み取れるところである。それゆえに、市町村はもとより製造者、販売店のこの問題に関する社会的責任も当事者が感じている以上に大きいといわねばならないし、この問題で所有者の自己責任を啓発するためのリーダーシップをとれるのは、所有者と常日頃直接接する市町村、販売店等をおいては他にないと考える。また、「不法に投棄されたものの処分に税金を投入することに対する市(町村)民の批判」があるものの、少なくとも公共の場を占有し市民生活に害を及ぼす廃棄物の取り除きは、地方自治体の役目であろうことを考慮し、上記の提案とした。 なお、自動車業界では廃自動車用の処理相談とその処理を販売店で受け入れるシステムを構築し、積極的にこれを押し進めるとともに、車台番号により所有者を追跡するなどの方法により路上放棄の防止に努めつつ、放棄車の排除について費用を当該市町村と分担する考えを導入している。したがって、廃船についても同様の考えを踏襲することがベターとの考えで提案した。 3)廃船の処理方法では、新しい処理技術の開発・改良に対する業界の積極的な取組みを望むと共に、市町村、廃棄物処理業者等にも現在開発されている処理技術の活用によってできるだけ廃棄物の減容、資源の再利用を図ることを求めた。
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